何もないところからは何も生まれない

 

登場人物:蒼井 桜 蒼井 春子

山下 正悟 北山 純子 川竹 心 

川竹 壱ニ 川竹 流偉 通行人 天下 沙耶

 

・プロローグ

 

ネットの画面:2001年 29 375人の方が自ら命を絶った。

厚生労働省 平成13年人口動態統計より

 

 

 

・第一幕

 

屋上にて 二人寝転んでいる 空を見上げながらつぶやく

山下「蒼井」

蒼井「なに?」

山下「すいこまれそうなくらい天気が良いなぁ」

蒼井「そうやね」

山下「空飛べたら良いのになぁ」

蒼井、身を起こして、山下を優しく覗きこむ。

蒼井「空飛べたら、正悟どっかに飛んでいってしまいそう。」

(蒼井再び寝転ぶ)

蒼井「空とべんくて良かったわ。」 蒼井笑う。山下微笑む。

山下「蒼井と俺は繋がってる」

蒼井「どゆこと?」

山下「何となく」

蒼井「ほんま、正悟って訳わからんわぁ。そういうとこ好きやけど」

蒼井笑う。

山下「俺はそういうところで訳わからんってゆってくれる蒼井を

大切に思う。」

蒼井「ありがとう」

山下「色白いなぁ」

蒼井「白いか?黄色くない?」

山下「白い。溶けそうになく白い。」

蒼井体を伸ばす

蒼井「溶けそうになく、ってなんなん?」

山下「綺麗な一本の花みたい」

蒼井照れて笑う。

山下「欲情してきた」

蒼井「やめてや、会社の屋上やで。」蒼井時計見る。

蒼井「そろそろ戻ろ」

山下「おぅ」

蒼井、立ち上がる。山下、体を丸くする。

山下「俺もう少しだけ休んでくから、蒼井、先に行ってて。」

蒼井「分かった」

蒼井、ドアまで空を見上げながら歩く。

ドアのところで振りかえる。少し心配そうな顔をして、

また前を向き、ドアを空けた。

 

・第ニ幕

 

蒼井、屋上のドアを空けながら声をかける。はじけるような声で

蒼井「正悟」

山下、屋上のヘリにこしかけている。

蒼井「正悟?」と声をかけるが体が動かない。

山下振り向く。焦点のあわない目。笑う。山下そのまま落ちる。

蒼井、立ったまま動けない。目はしっかり見開いている。

救急車のサイレン。

蒼井、自分の部屋にいる。部屋のドアには鍵がついている。

ノックの音。

蒼井母「桜、御飯置いとくからね」

トンという音。部屋中に貼り付けられた色鮮やかな鳥の写真。

(なんで?)

蒼井、鳥の写真に目をやる。(うちも飛びたい)

 

・第三幕

 

心は子供部屋。心の子供、流偉が、心の目の前で遊んでいる。

音は聞こえない。

壱二「ただいまー」

心はふと我に帰り同時に流偉は目の前から消える。壱二ドアを開ける。

慌てている心。

心「流偉?流偉?どうしよう、壱二、流偉今まで目の前に

いたのに消えちゃった。私探しに行ってくる。」

壱二、疲れた顔で言う「何度言えば分かる?」ため息

心「何をよ?壱ニは心配じゃ無いの?」

心、探しに出て行こうとするのを壱二が止める。肩を揺さぶる。

壱二「ちゃんとこっちを見て。流偉は死んだんだ。辛いのは分かる。

だけど、いい加減俺も疲れた。

明日でもう四年だ。流偉は死んだ。公園からの帰り道、

道路に飛び出して、車に轢かれて、死んだんだ。」

心「壱ニ、何言ってるの?流偉はいるよ。

さっきまで一緒に遊んでいたよ。

壱二と遊んで欲しくて隠れているのよ」

壱二「・・・別れよう。もう限界だよ」

心「何言ってるの?そんなことしたら流偉が泣いちゃうよ」

壱二、壁をドンと叩く。心、おびえた顔で壱ニを見る。

壱ニ、何も言わずに玄関を出る。

心「なんで?」

心、ふと我にかえったような表情。

心「…流偉…探さなくちゃ。流偉、どこにいるんだろう?

車に轢かれたりしたら大変だ」

心、慌てて玄関を出る。出てすぐの所に壱二が立っているが、

心には見えていない。

壱二、苦い顔で心の後姿を見送る。後姿が見えなくなった頃、

壱二はゆっくり家を去る。

 

・第四幕

 

夜の公園。

心「流偉?流偉?出ておいで。もう大丈夫よ。…流偉?流偉?

どこに隠れてるの?」

通行人、心の方に目をやり、ぱっと目をそらし急ぎ足になる。

仕事がえりのOL、心の方に目をやり、心の方に歩き出す。

鞄からぬいぐるみを出す。

心「もう大丈夫よ、流偉?出ておいで」

純子「心、流偉いたよ」といってぬいぐるみを手渡す。

心、にっこりして、ぬいぐるみを抱きしめる。

心「どこいってたの、流偉?」

純子「探して欲しくて、うちに隠れてたよ」

心「そうだったのかぁ。心配しちゃったよ、ママ」

心、ぬいぐるみを抱きしめる。

純子「さ、流偉、もう眠そうだから、おうちに帰ろう。」

心「流偉、ほんとに心配したよ。勝手に飛び出したら絶対に駄目だよ!

…でも、ほんとによかった、車にでも轢かれたらどうしようかと

思ったよ」

心、穏やかな表情に戻る。純子、悲しそうな表情。心の肩に手をやる。

純子「さ、帰ろう」

暗い電灯の下、二人の後姿。

 

・第五幕

 

タイトル:killing yourself

表紙: enter 

コンテンツ: bbs (レス不可)

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会いたい。正悟会いたい。会いに行っても良いかな?

なんで何も言わずに逝ってしまったん?

寂しい。なんで、訳わからんなんて言ってしまったんやろう。

正悟のSOSやった?空とびたいって言葉。

正悟のお母さんに、怒られた。側にいたのに、

なんで気づかなかったって。うちが正悟を追い詰めたんやって。

うちが妊娠したからなん?うちが妊娠さえしてなければ、

死なずに済んだんかな。どうしたらいいんやろ。

正悟なしでどうやって生きていけばいいんやろう?

会いたい。苦しい。まだ一度も泣いてない。泣けへん。

正悟、愛してる。正悟がうちと子供を置き去りにして死んで

しまっても、それでも愛してる。会いたい。

正悟の声が聞きたい。

name:aoi

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流偉。今朝も起きたら私の横にはいなかったね。

薄汚れたぬいぐるみだけ。流偉、死んだの?

私、信じられないよ。流偉、会いたい。流偉、パパ出ていっちゃった。

パパがでていってから始めて、流偉が死んだのかもしれないと、

思ったよ。あんなに流偉と私を愛してくれてた人がうちに

いないなんて、おかしいね。私がおかしいからだね。ごめんね、流偉。

流偉、帰ってきて。お願い。帰ってきて。流偉。

name:ココロ

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正悟、なんでほっていってん?なんでうちらを棄てて逝ってしまった

ん?うちを愛してなかったん?

酷い、正悟。苦しい、正悟。酷い。辛い。酷い。

あれから、会社も、しんどい。

うちを気遣ってくれてるけど、どこかでいつも責められる。

『気づかなかった?』『なんで気づかなかった?』って。

苦しいねん、正悟。なんでこんな苦しい思いをせなあかんの?

あんなに希望的なこといっぱいゆって。どれもこれも嘘やったん?

うちほんまにどうしたら?

お腹はまだめだてへん。だから、まだ誰も気付いてない。

誰にもゆってないし。ようゆわれへん。

どうやったら一人で生きていけるん?

子供、どうやって育てたらいいん?

名前まで一緒に考えたやん?どうしたらいいんよ。正悟、どうしたら?

なんで死んだ?子供おろしたほうが良かったん?

最近すごいお腹が張る。流産するんかなぁ。うちらの子供、

死んでしまうんかなぁ。そんなん嫌や。うちは嫌や。

正悟のあほ。うちはどんどん自分を嫌いになっていく。

正悟。正悟、正悟、正悟。正悟。

好き。それでも好き、会いたい。正悟、うち、死にたい。

死んで会えるなら。正悟に会いたい。

name:aoi

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流偉。私ね、流偉に会いたい。私の気持ち、誰もわかってくれないよ、

流偉。会いたい。流偉。

早過ぎるよ。代わりに死にたかったよ。痛かったね、流偉。

辛かったね、流偉。私も苦しいよ。

流偉に何もしてあげられなかったね。流偉、帰ってきて。

お願い、帰ってきて、流偉。

最近眠れない日々が続いてるよ。体がだるくて、何もしたくない。

家事も掃除も全部純子がやってくれてる。

あんなに綺麗好きだったのに、不思議だね。

なんにもする気にならないんだ。

時々ね、不意に胸がどきどきして息が出来なくなるよ、流偉。

汗がとまらなくなるんだ。外に出れないよ。

怖くて、怖くて。お母さんなのに、私弱いね、流偉。

駄目なお母さんだ。流偉、他の子供を見ると、駄目なんだ。

酷いことを思ってしまう。苦しくて苦しくて。めまいがする。

何も良い方になんていかないと感じる。

流偉、夢でも良いから、会いたい。

name:ココロ

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正悟、昨日、初めて涙が出た。夕焼けがめっちゃきれいやってん。

突然涙が出てきてびっくりした。なんでか分かる?

正悟、覚えてる?

お金全然なくて、妊娠わかっても、指輪も買えへんかった。

でも、正悟が、突然うちをバイクの後ろに乗せて富士山に

連れていってくれた。

夕焼けが真っ赤で。

富士山がゆっくり赤く染まって。

めちゃ綺麗やった。

正悟が、『これが俺の蒼井への気持ち』ってゆったやん。

うち、なんも言われへんかったけど、

ほんまはめっちゃうれしかった。正悟、会いたい。

一言でもいいから、声が聞きたい。

name:aoi

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昨日ね、懐かしいテープを見つけたよ。流偉がごにょごにょって

話し始めたのが、すごく嬉しくて、

パパとママ、流偉に内緒で流偉の声をテープにとってたんだ。

流偉は、テープをいじるの好きだったから、壊されないように

本棚の奥に隠してたんだよ。

知らなかったでしょ?私もすっかり忘れてたよ。聴いてみた。

流偉の声。

すごいね、流偉。あなたの声が耳に響いた途端、私の身体の

細胞全部が流偉を求めて、動き始めたよ。

そしたら、もう苦しくて苦しくてしょうがなくなって、

思わず手首をきってしまった。

でも、怖くてほんの少しだけしか傷つけられなかった。

ママ、弱いね、本当に。流偉、会いたい。もうすぐ会いに行くから、

待っていて、流偉。

愛してる。もう寂しい思いはさせないよ、流偉。一人にはさせないよ。

流偉。

name:ココロ

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どうして?

name:aoi

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流偉、私がついていたのに、どうして轢かれてしまったんだろう。

私のせいなのかな、流偉。このあいだ、あなたがいなくなって、

初めておばあちゃんに会いにいってみたよ。おばあちゃんね、

目を腫らしてた。そして、おばあちゃんは私を睨んで叫んだんだ。

『でていけ、人殺し』って。

持っていったお菓子を置いて、逃げて来た。

ひどいよね。おばあちゃん。私だって苦しいのに。そんな事誰より

私が一番考えているのに。

私あの時、どうしてもっとちゃんと流偉を見ていなかったんだろう。

警察にも何度も聞かれたよ。何も答えられなかったけど。

頭の中真っ白で。何もわからなかった。

おばあちゃんにいわれて、苦しかった。

おばあちゃんも苦しんでるんだと思う。

ママね、道を歩くたびに、何かに責められている気分でどうしようも

なくなる。

誰が責めているわけでもなくて、本当はきっと自分で

責めているんだね。本当にごめんね、流偉。

あなたが少しずつ遠くに行っているようで苦しいよ。流偉。

こんなにあなたを思っているのに、だんだん思い出せなくなって

ゆくんだ。色んな事を。あなたを。

だから、決めたよ。会いに行くからね。今度こそ本当に、

会いに行くからね。

name:ココロ

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どうやって死のうか。

正悟、今日お医者さんが教えてくれた。女の子やって。

男の子でも女の子でもいける名前考えて良かったなぁ。

歩は順調に大きくなってるで。もうおろすこともできひん。

全然食べてないのに、赤ちゃんって不思議やね。

どんどん大きくなんねんもん。正悟と一緒に歩の成長見たかったな。

でも、うち、どうしても正悟を憎みきれへん。

正悟、会いたい。めっちゃ好き。きっと正悟が私にゆったこと、

その瞬間は本気でゆってくれててんな。

それもわかるようになってん、正悟。覚悟は出来てる。

正悟、会いにいくから、待っててな。毎日自分を責める生き地獄は

もう十分。ただ穏やかに死にたい。歩と一緒に、正悟の側に

行きたい。

name:aoi

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流偉、あの後あばあちゃんから、手紙が来た。壱ニさん、死んだって。

自分で命を絶った、って。

おばあちゃん、私に知らせたくなくて、ずっと内緒にしていたんだって。

けど顔を見たら、我慢できず、酷い事をいってしまったって。

そう書いてあった。どこまで私は駄目な人間なんだろう。

壱ニさんが残してくれてた貯金ももう底をついたよ。昨日少しだけ、

キャッシングで借りてしまった。

怖い電話がかかってくるよ。そのうち。

こんなに切ないのに、お腹が空くなんて、不思議だね。流偉。

お金だけちゃんと返したら、お母さんも逝くからね。

お父さんと待っていてね。もう、思い残す事は何もないよ、ママ。

流偉、愛してる。

name:ココロ

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表紙: watch it

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初めまして、管理人です。お二人の覚悟が決まったようなので、一緒に死にませんか?

良い薬を持っています。苦しまず安らかに自死できます。眠るように。連絡手段がわからないので、

決行の日はこちらで勝手に決めさせて頂きました。2003.8.7 PM111:00 JR横浜線T駅から

タクシーでS公園まで集合してください。周囲に民家の無い、静かな森の中にある空き地です。

私は先に行って、お待ちしております。

name:沙耶

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・第六幕

 

沙耶、森で太鼓を打っている。

蒼井、森の入り口で、心を見つける。

心、不安そうに入り口から中を覗いている。

蒼井「あの…ココロさん?」

心、びくっとしながら振り返る。

蒼井「ごめんなさい、驚かすつもりはなかってんけど…」

心「aoiさん?」

蒼井「うん」すっきりとした表情で答える。

心「お腹、大きいね…」

蒼井「今八ヶ月やから」

心「そっか…」

蒼井「はいらへん?」

心、迷う。

蒼井、やさしい顔をして、心を見る。

蒼井「…じゃぁ、うち先はいっとくね!」

心「…私も行く」

太鼓の音は止まらない。

沙耶、太鼓を叩いている。

蒼井「こんばんわ」

沙耶、振り向いて、笑顔を見せる。

沙耶「初めまして。私、沙耶。お腹大きいね、何ヶ月?」

蒼井「八ヶ月」

沙耶「そっかぁ。…はじめまして!」

心「はじめまして」

沙耶「遠くからお疲れ様!」

心、首を振る。

蒼井、沙耶の隣に腰を下ろす。

心、少し迷いながら、距離を置いて座る。

沙耶、鞄からビンを取り出す。

沙耶「これ、お薬」

蒼井「ありがとう」

沙耶「今、飲む?…飲んで暫くしたら眠くなってくるけど、どうする?遺書とか書く?」

二人とも考えてる。

沙耶「残された人の気持ち、わかるんだよね。良く考えたら、聞くまでも無いか」

そういって、沙耶鞄からノートと鉛筆と下敷き二枚を出す。

沙耶「私は書いてきたから、良かったらどうぞ」

心、見つめる。そして、受け取る。

蒼井もうけとる。

沙耶「くらいなぁ(笑)」

蒼井、苦く笑って答える「ほんま(笑)」

心「…たしかに(笑)」

3人で笑う。心、なんとなくふっきれた表情。

沙耶、伸びをして横になって空を眺め始める。

沙耶「こうやって夜外に出て空眺める事ってほとんどしないよね。

でもさぁ、こういうの、結構素敵だし大事だと思うんだ」

蒼井「うちも長いこと、自然な自然に触れてない。

ドクドクしい人達とウソくさい人工物に取り囲まれた生活してる」

心「私も。なんか、いつだって、空気がピンと張り詰めてる感じ。

すごい緊張感」

沙耶「たまに、ばばんとお金使って海外旅行行ったりして、自然に触れて。

それってどうなんだろうね」

蒼井「非、日常」

心「ほんとは、日々の中にこそ、必要なのかな。

体が喜んでる気がする空気綺麗だし気持ちいい」

蒼井「でもそのほうが良いかも。正直、張り詰めてないと生きていられへん状況やし。

隙は怖い。…てか、沙耶チャン寝てない?」

心「寝てる(笑)」

蒼井「なんなんやろね(笑)」

心「ほんとだね(笑)」

蒼井「でも…」

心「どうした?」

蒼井「うち、なんか今、あんまり正悟の事でいっぱいいっぱいになってない。」

心「私はいつもなにかに見つめられて責められてるって感じてたけど、今この瞬間限定で、

なんとなく許されてる感じ。」

蒼井「不思議」

心「…思うんだけど、死にたい、なんて、シビアすぎて笑えない事をお互いに語り合ってきたわけでしょう。

書きこみだし、一方的に吐き出してるだけなんだけど、語り合った気分なんだよね。唯一私が私であれたから。

なんか、すごい親近感あるんだ。あなたに対して。許されてる感じ。そして、なんだろう、緊張を通り越して、

妙に肝が据わってる。不思議、あんなに追い詰められてたはずなのに、意外と楽しんでる自分がいる」

蒼井「うちも意外と楽しんでる」

心「でもさ、こういう話し、しだすと、なんかやっぱきついね(苦笑)」

蒼井「そうやね(苦笑)」

心「…書こうか」

蒼井「…うん」

二人書き終わって、夜。

蒼井「沙耶チャン、起きて」

心「朝だよ(笑)」

蒼井、心「起きないね(笑)」

蒼井「せーのでおはようって叫ぶんはどうやろ?」

心「いいね(笑)…せーの」

蒼井、心、大声で「おはよーーう」

蒼井「…寝てる(笑)。ありえへんし、なんなんほんま」

心「沙耶チャン、書けたよ!起きて」

沙耶、心に揺さぶられて、起きる。

沙耶「ごめんごめん、寝かけてた…」

蒼井、心「寝てたし(笑)!」

沙耶「(笑)ごめんごめん!」

心「手紙、書けた」

沙耶「ほんと?じゃあ、薬のもうか」

蒼井「…てか、沙耶チャン軽いなぁ!死ぬねんで!(笑)」

沙耶「軽いか(笑)。ごめんよ!」

心「正直、私、すごく怖いのに」

蒼井「うちもやって」

沙耶「私もだって」

桜、心「嘘だぁ(笑)」

沙耶「(笑)どうする?やめておく?のむの」

蒼井「…私は、大丈夫。決めてきた事だもん。ずいぶん苦しんだ結果だし。生まれてきてすぐ

私が死ぬくらいなら…」

心「…私も、決めたから。うん。飲む」

沙耶「了解」

沙耶、心と蒼井の手のひらに薬を乗せる

沙耶「かなり大量の薬やけど、飲みこんで。はい、ビール」

沙耶、おもむろに薬を噛み砕いて、飲む。

蒼井、お腹に目をやり、片手を当て、もう片方の手で口に薬を放りこむ。

心、手のひらの薬を眺めてる。

沙耶「無理して飲まないでね、頼むから」

心、頷く。飲む。

沙耶「この薬、眠くなってくるやつだから。朝起きたら死んでる。眠るまでが最後。

太鼓叩く?」

心「…怖い」

蒼井「うちも、めちゃ怖い」

沙耶「冷静に死ぬ人の誰もが怖いよ。おかしなことじゃない」

そういって、沙耶は太鼓を叩き始める

蒼井も叩き始める。

心「そうだね」

心も叩き始める。

3人のリズムはだんだんと合っていく。(注!本気で叩く事。)

ただ太鼓を叩く。

蒼井(不思議、恐怖が消えてく。なんやろ?めちゃ幸せな気分。長い間忘れてた力を感じる)

心(生きてくって、こういう事なのかな。仲間がいて、苦しいことがあって、乗り越えて、楽しむ。

シンプルでクサクテ、あったかい)

蒼井「うち、まだまだ生きてたいかも」

心「私も、まだ生きていたい!」

沙耶「生きてるじゃん!」

蒼井「そうやね(笑)」

心「生きてるよ」

沙耶「ここにいるよ」

蒼井「正悟見て。うちは生きてる。こんなとこで不思議な仲間と今この瞬間生きてんねん。

正悟の子供と一緒にここに今いるんよ!」

心「流偉!ママだよ!ここにいるよ!生きて今、ここにいる!」

太鼓の音はだんだんと激しさを増していく…

暗闇の中、3人、死んだように眠っている

 

・第七幕

 

沙耶、こっそり森を出てゆく

朝の森

蒼井は目を覚ます。

蒼井「生きてる?」

横に目を向けると、心が手紙を持っているのが目に入る

心「…おはよう(笑)」

蒼井「……おはよう(笑)」

二人笑い出す。

蒼井「生きてるなぁ(笑)」

心「うん。生きてるね」

蒼井「不思議、生きてる」

心「うん、ここにいる」

蒼井「今、この苦しい世界で」

心「苦しみを抱いたまま」

蒼井「でも、逃げずに」

心「生きてる!」

蒼井、心「ここにいる」

二人笑って叫ぶ!

 

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